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2018.06.11 Mon UPDATE花とうつわ桔梗(二階堂明弘さんのうつわ)花活けと文章:鈴木悦子  写真:上原未嗣

桔梗のはっきりとした思い出は、6歳の頃に遡る。小学校にあがりはじめての自由研究は、母のススメで「押し花」になり、ほぼ毎朝、ラジオ体操が終わったあとのまだ涼しい時間帯に、母と一緒に近所の公園や原っぱに、朝露がついた草花を摘みにでかけた。

道端に自生しているものが対象だから、採れるものといえば、イヌムギやネコジャラシ、ちょっと豪華になって露草などだったので、色と輪郭がくっきりとして、すん、とすました印象の桔梗を見つけ、ハサミを入れる瞬間はとてもドキドキしたことを覚えている。

「きれいよね。お母さん、好きだな。」と母が言ったその日から、桔梗は私にとってすこし特別な花になった。
そして当時の母の歳を追い越して母親になり、娘ができた今、いつか同じように私も娘と一緒に草花を摘みにいきたいと思っている。

凛とした輪郭の美しさを、より引き立たせ受け止めてくれる、二階堂さんの焼締め。乾いた風合いの褐色が桔梗とよく合います。

<花とうつわ について>

日々暮らしのなかで、花との向き合い方は人それぞれさまざまあり、何種かを組み合せ華やかに仕立てることも一興なのですが、ただ一杯のうつわと草花とに向き合い、どこがチャームポイントなのかを観察して見出し、静かに活ける作業というのは、贅沢な時間だなとつくづく思います。それをさらに写し撮って残していくという、ごまかしのきかない企画にこわごわしつつ、この不定期連載では、季節の花とうつわとの邂逅を通して思い感じたことを、すなおに綴っていきたいと思います。(鈴木悦子)