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POTTERS

2017.02.07 Tue UPDATEWORDS OF GUESTWords of UTSU-WA?Vol.9WORDS : Naoko Takegata(daily press) PHOTOS : Toru Kometani, Naoko Nozu

UTSU-WA?のお客様に当日の体験をシェアしていただくwords of guest。

UTSU-WA? Vol.9 うつわと食とご縁の会(2016年12月10日 開催)は、
PRオフィス・デイリープレスの竹形尚子さんにレポートしていただきました。
「会いたかった!」と思わせてくれるほどのうつわにこの夜「出会って」しまったという竹形さん。
その興奮の瞬間は、こんなかんじだったそうですよ。

UTSU-WA? Vol.9 うつわと食と⑤の会

並木橋から六本木通りへ抜ける通りから、横道を少し入った暗く静かな住宅街に、
素敵なシルエットの建物が見えてきました。

使い込まれてしっとりした木の扉を開けると、途端にみんなの賑やかなおしゃべりや、お料理の準備の音や匂いが、目に耳に鼻に飛び込んできて、わくわくしながら部屋に入りました。そこには真っ赤なクロスをかけた大きなテーブルがあって、ぐい飲み、グラス、片口…とお酒を飲むための素敵な器がずらり。

イチ、ニ、サン。…いや、3秒も経っていなかったかもしれません。
「会いたかった!」と思うまでの時間は。

土の色や焼いた表情がとても素直に表現されていて、薄く繊細なのになんとも大らかな存在感を醸し出す片口と目が会いました。焼締めで作られた片口を手に取って、自分の手にしっくりとくる感覚を楽しみながら、目は再びうようよとテーブルに。そして見つけた縦長のとても小さなおちょこ。この片口とおちょこ素敵!出会った!などと一緒にいた友人に興奮して伝えていると、作家の松本かおるさんご本人が友人の隣にずっといらっしゃったようで、「それわたしなんです」と。うれし恥ずかしでした。

日本酒を注いでもらい、また大きなテーブルへ。シェフの雅代さんのお料理が小皿料理で、4名の作家の方の器で次々と運ばれてくると言う。テーブルの上には雅代さんが書いたメニューが置いてあって、それを読むだけで旅が始まったような気分になってしまう。雅代さんのお料理はいつだってそうで、1つのお料理から、噛むたびに奥の方から新たな味や景色が顔を出してきて、次々と世界が広がります。

料理を載せた小皿が運ばれてくると、楕円の薄いプレートばかりに目がいく。肌色っぽいものから、赤茶、錆びた銅のようなものまでいろんな色があって、どれも美しい。これも松本さんの器。自分が感じたファーストインプレッションをじっくり確信しながら、そして我が家の食卓で使う想像をしながら、友人と、そしてこの日に出会えた方々とお酒と料理を楽しみました。

会の半ば、松本さんと再び同じ輪になる時間がありました。

とても気さくで、一度社会人を経験した後、備前で学び、今は長野で備前の土を使って制作をされていることなどをいろいろなお話しを伺えました。女性らしくしなやかな美しさと、豪快でさばさばとした気持ち良い性格の、とても素敵なバランスを持っている方だなと思いました。それがそのまま器に。今のテーブルシーンに合うかたちでありながら、土に素直に、火に素直に作られたプリミティブさがある。とても大らかな器。あぁこの方が作っている器だ、と腑に落ちました。家路につくわたしの手には、片口とおちょこと楕円の平皿が数枚。

こんなふうに器と出会って、それで食事をして、作ったご本人とお話しできて、納得して家に持ち帰れるUTSU-WA?。

なんて素敵な時間だったろう!と思います。

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文・竹形尚子(たけがたなおこ)

デザインの分野を中心としたアタッシェ・ド・プレス事務所「デイリープレス」を2003年にスタート。書籍倉庫→アンティーク家具屋の後に引き継いだオフィスの半分を「Naname(ナナメ)」と名付け、文字通り坂道でななめになっているこの場所でできる展示会やクリエイターとのプロジェクトを始めたところです。
http://www.dailypress.org

写真・米谷享、野頭尚子