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2017.01.12 Thu UPDATEWORDS OF GUESTWords of UTSU-WA?Vol.7WORDS : Saiko Osara("saikolo shokudo" planer) PHOTOS : Toru Kometani

UTSU-WA?のお客様に当日の体験をシェアしていただくwords of guest。

UTSU-WA? Vol.7 うつわと食と夜饗の会(2015年12月5・6日 開催)は、フードプランナーで「さいころ食堂」主宰の大皿彩子さんにレポートしていただきました。
UTSU-WA?に初めて参加された大皿さん。
作家と交わりながら「お皿を彩る」という体験を、ご自身の名前にも重ね合わせ感じ入ってくださったよう。
うつわが繋ぐ料理と人の輪、和みの時間を満喫していただけてとても嬉しいです。

 

「UTSU-WA? Vol.7 うつわと食と夜饗の会」

作家さんと一緒に料理とワインを堪能し、
うつわと存分に戯れる時間。
初めての体験だった。

宴の開始直後、
前菜を自分で盛りつけるという演出で
わたしは、一つの皿に夢中になった。

真紅の平鉢。

その色は、
記憶の中にある、淑女の口紅だった。
上品な色気に、手がのびた。

片手ですっと持ち上がるちょうどいい質量、
スリムだけど安心して触れられるふくよかさ、
うっとりする腰の曲線。

きっと、料理とともに完成した一皿を目にしただけでは
これほどの魅力に、気がつけなかった。

食べる前から高揚する食事会、
なんて新鮮なんだろう。

幸運にも、真紅の平鉢をつくられた鈴木陽子さんと
同じ食卓を囲むことができた。

陽子さんは、お名前のとおり陽だまりのような方だった。

千葉県我孫子の工房での日常は、
するすると絵付けをしている様子を
ひょっこり見にくるおばあちゃんの事など、
のんびり温かいエピソードばかりだった。

また、うつわのことを何も知らないわたしたちへ
技法を丁寧に説明してくれた。

パンが大好きでパンに関わる仕事をしているわたしは
陽子さんのお話を聞きながら、勝手に、
パン職人と近いパッションを感じていた。

パン職人は、料理人でもあり、
酵素や酵母という不確かな生き物と仲良くする醸造家だと思っているが、
うつわ作家さんも、

土や炎の生み出す不確かさを昇華させている。
何100年も残る形にして。

あぁ、かっこいい。

体力的にも厳しいであろう職人作業のことを
ニコニコしながら楽しそうに話してくれた陽子さん。

このやさしい笑顔も、
窯焚きの最中はドキドキ緊張するのかな、
念を送ったりするのかな。

もういちど、手元のうつわを撫でた。

この日のお料理は、
見た目も香りも味も艶やかで素晴らしかった。

お料理が乗った全てのうつわが、
血が通ったように、生き生きしていた。
「お皿を彩る」とはこういうことか、と思った。

次回の「UTSU-WA?」には誰を誘おうかな。
大切な友や先輩の顔を思い浮かべてワクワクする。

「食事のお誘いじゃないよ、
“うつわ” のLIVEに行きませんか?
魂のこもったうつわを、目で、肌で、耳で、
それに、とびきりの味で楽しめるの!」

と口説こうと思う。

———

文・大皿彩子(おおさらさいこ)

(株)さいころ食堂 / フードプランナー

メニュー開発や料理イベントなど食のプロデュースを行う。
アイディアでみんなを楽しくする”おいしい企画家”。
saikolo.jp

写真・米谷享